秋の夜長の読書三昧
- 2014/12/01
- 20:00
みなさまこんばんは。
朝夕はめっきり冷え込むようになり、日も随分と短くなって参りました。
海の向こうのLAでは、いくつか興味深いクルマたちもお披露目されたようですね。
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まずはコチラ。 Audi Prologue "A9" になるだろうとウワサの高いコンセプトカー。 全長x全幅x全高 5100 x 1950 x 1390 (mm) ホイールベースは2940mm 最大出力605hp、最大トルク76.5kgm 4,000cc V8ツインターボ クワトロ (image & data source: Response) |
メルセデスのSクラス・クーペの対抗馬になるであろうラグジュアリー・クーペです。
相変わらずため息が出るようなサイドビューのエレガンス。
個人的にはフロントのエアインテークなど、細部のデザインはちょっとイカツサが強すぎる気もします。
ランボルギーニ・デザインのフィードバックが来てるんでしょうか。
いずれにしても、たとえ市販されたとしても間違いなく1,000万円を軽く超えてくるクルマ。
絶対買えませんが。
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続いてはコチラ。 mazda CX-3 ベースは Demio でしょうか。1.5L Skyactiv-D を搭載。 全長×全幅×全高 4,275 × 1,765 × 1,550 (mm) メルセデス・ベンツ GLA や BMW・X1 より一回り小さく、VW の Cross Polo より一回り大きい。 日本の道路事情にはまさにジャストサイズのクロスオーバーSUV。 (image & data source: MAZDA OFFICIAL WEB SITE) |
これは売れるでしょう。
デザインもとてもよくまとまってますし、サイズ感もちょうどいい。
しかも 1.5L のスカイアクティブ・ディーゼル。
最近のマツダはインテリアもホント質感高いし、日本はもちろん、欧州でも結構ヒットするのではないでしょうか。
ND型ロードスターも控えてますし、相変わらず攻めてきますね、マツダ。
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さて、秋ももう晩秋とて、冬も間近ではありますが、夜長に読書としゃれ込むのも乙なものかと。
ワタクシ、活字がないと生きていけない人間でありまして、このところ興味深く読んだ本をいくつかご紹介したいと思います。
とはいえ、ほとんどクルマの話題に埋め尽くされている当ブログですので、来訪の方々も勢いそういう嗜好が強かろうかと。
折に触れて他のジャンルの本もご紹介できればと思いますが、まずは「その筋」の本から何冊か。
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歴史と伝統と ― 「アウディの矜持」
まず初めにこちらの一冊。
「アウディの矜持」 御堀直嗣 河出書房新社 2012年12月18日 発行 |
スポーツのチームでも、特定個人でも、はたまた工業製品や服飾品についてもそう。
熱しやすく冷めやすいので大抵は長続きしないのですが、熱してるときは凝り性でとことんその対象について背景を知りたくなる。
で、そんなワタクシのファン心理をくすぐるモノと言えば何か、というと、きっかけとしては顕在化したスペックやデザインには違いないのですが、のめり込む要因になるのはどうやらその背景にある歴史であったり、哲学であったりするようです。
まあ、殊更に言い立てるまでもなく、おおよそファン心理というものはそういうものでありましょうが、ともあれそんなわけで、手に入れたモノを愛するために理屈付けが必要であると、何とも厄介なことではあります。
で、そんな「理屈付け」の部分で大いに役立ってくれるのがこの手の本です。
「ブランド本」と言ってもいいでしょう(そんなジャンルがあるのかは知りませんが)。
フォルクスワーゲングループについては、以前もご紹介した「トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者を目指す最強企業」で随分感銘を受けたわけですが、その傘下にある「アウディ」というブランドが、どう成り立ち、どんな「ブランドとしてのビジョン」を持っているのか、そんな興味を充たしてくれる本を探していたところ、この本に出会ったわけです。
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「アウディ」というブランドというか社名というか、ともかく「車名」が登場するのは1910年、およそ1世紀前のことになります。
20世紀最初の年、1901年に自身の名をとって「ホルヒ」という会社を立ち上げたアウグスト・ホルヒなる自動車工がおりました。
ベンツで修業を積み、工場長まで務めた彼でしたが、独立・創業したこの会社で、採算を顧みず高品質のクルマ造りにこだわるあまり、ついには経営陣から自分の創業会社を追い出されるという憂き目を見ます。
そこで1909年に2つ目の会社を立ち上げたのですが、社名・車名を以前同様「ホルヒ」としたところ、古巣から同一名称使用に対しての抗議を受けます。まあ当たり前ですね。
そこでやむを得ず、自分の名前をラテン語訳にした「アウディ」という名称を使うことにしたのです。
ホルヒ ― "Horch" とはドイツ語の "horchen" 、「聞く」という意味だそうで、これをラテン語訳すると "audi" になるわけですね。
英語でも使われるオーディオ ― "audio" も語源は一緒です。
第一次世界大戦とそれに続く不況―時代の奔流に飲み込まれ、企業としてのアウディは「アウトウニオン (Autounion)」という企業共同体に吸収されます。
銀行主導で行われたこの企業合併は、ホルヒ、ヴァンダラー、DKW、そしてアウディの四社によるものでした。
そう、現在ウチのクルマにも輝いている「四つの銀輪」はこれを象徴しているのです。
続く第二次世界大戦とドイツの東西分離、なおも訪れるこれら時代の激流の中、紆余曲折を経てアウトウニオンもまた1956年にはダイムラー・ベンツ、そして'64年からはフォルクスワーゲンの支配を受けることになりました。
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栄枯盛衰と申しますか、ご覧の通り「アウディ」というブランドの起源は思っているよりもずっと古い。
現在フォルクスワーゲングループを形成する多くのブランドの中でも最も古いものの一つです。
ベントレーよりもなお古く、ブガッティとほぼ同時期の生まれです。
もちろん、直系というには少々無理がありますし、「同じ名を冠した別物」と見る方がむしろ自然でしょうが、それでもアウグスト・ホルヒがクルマ造りに求めた「高品質」「高性能」「先進性」は、現在のアウディにもビジョンとして脈々と息づいているように思います。
20世紀後半、アイデンティティの保持に苦心していたこのブランドを、再び輝かせるに至ったのはやはりこの人、フォルクスワーゲングループの巨人、フェルディナント・ピエヒ博士でした。
あまりにも剛腕で、専制的な彼の企業支配は賛否両論ですが、少なくとも彼なくして今のアウディの「プレミアム」なブレンドイメージはなかったであろうと思います。
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クルマ造りを裏付けるロマン、それがこの本で読み解かれる歴史には一杯詰まっています。
是非ご一読あれ。
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飽くなき挑戦 ― 「経営に終わりはない」
次にご紹介するのはこの一冊。
「経営に終わりはない」 藤沢武夫 文芸春秋 1998年7月 発行(文庫版) (オリジナルの発行は1986年) |
一方、その宗一郎氏を支えたこの藤沢武夫氏の名前は、それなりにクルマか経営学に興味のある方でないと耳にしたことはないかもしれません。
しかしこの藤沢氏こそが、事実上ホンダという「企業」を立ち上げ、維持し、拡大に導いた創業経営者だったということが、この本を読めばよく分かると思います。
この本に著わされていることを一言でいえば、ホンダにとって本田宗一郎は「夢とビジョン」の源泉であり、それを形にするための「現実」を担ったのが藤沢武夫だった、ということになりましょう。
二人の出会いから、ホンダの躍進の礎となったスーパーカブの開発と大ヒット、四輪への夢と既得権益との戦い、CVCCの登場、そして空冷にこだわる宗一郎氏とともに、自分自身も「老害」とならぬように引退するまで……幾多の危機と克服、挫折と栄光、対立と和解、読むものに感銘を覚えさせずにはおれないドラマが次々に展開されていきます。
文筆を生業としたわけではない筆者のことですから、文章自体は訥々として素朴です。しかしそこがまたいい。
実体験の本人だけが持つ「迫力」が、その文体であるからこそなおさら胸に迫ってきます。
藤沢氏自身も、「自分こそが企業としてのホンダを生み、育んできた『経営者』だ」という強烈な自負を持ち、語っていますがおそらく間違いなくそれは正しいでしょう。
本田宗一郎氏はエンジニアリング面において天才であったのだろうと思いますが、彼一人では現在のホンダを生み出すことは出来なかったであろうとも思います。
しかし、これも藤沢氏自身強く語っている通り、藤沢氏自身は「トップ」に立つべき人物ではなかった。
いや、より正確に言うなら、企業のトップを担う能力は十二分にあったでしょうが、彼がトップであったなら、やはり今のホンダはなかったことでしょう。
「企業のトップはビジョンを持ち、夢を描くことが何より必要。本田宗一郎にはそれがあり、自分はそれを実現させることが仕事」と心底信じており、そしてそのことに誇りを持っている。
宗一郎氏の「天才」に惚れ込み、それを世に放つことに自分の全能力を傾け、そしてそのことに無上の喜びを感じていた――そんな藤沢翁の生きざまと胸の内がまざまざと描かれています。
それにつけても何とも羨ましい二人です。
淡々と昔語りに描いていますが、迎え撃ってきた危機は想像もできぬほど凄絶でありましたでしょうし、二人の対立も時には深刻なものであったと思います。
しかし、根柢の部分で、尊敬しあい、信頼し合っていたことがよく分かるのです。
こんなパートナーに恵まれたならば、人生はどれほど豊かになることでしょうか。
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「ホンダの社長は技術者でなければならない」という伝統は、今に至るまで続いています。
工業製品を世に問う会社である以上、ビジョンを描くのは技術者であらねばならない、ということでしょう。
Fitに始まるHVとDCTの組み合わせという技術的なチャレンジは、やはりこのDNAの賜物だと思います。
ただ、言うまでもなく5度にわたるリコールなど、現代における品質管理の面では、今一度わが身を振り返る必要があるのかもしれません。
ホンダは、押しも押されぬグローバルな大企業になっていることは確かなのですから。
もうひとつ。
残念ながら正直ワタクシ自身としては、今現在のホンダの、殊に国内のラインナップには、ワクワクを感じられないと言わざるを得ません。
ホンダは、ワタクシなどが若いころには、シビック/インテグラ Type-R のようなバリバリの硬派から、プレリュードのようなバリバリの軟派(?)まで、若い衆がワクワクするようなクルマを、たくさん揃えていました。
若い衆にとっての「ホンダ」というブランドは、一つのステータスを形成していたことは間違いないと思います。
しかるに、現在のホンダ車種は、すっかりファミリー層向けになってしまいました。
ステップワゴンや Fit では、やはりワクワク感とは遠いところにあるような気がします。
とは言え、昨年の東京モーターショーでは、S660 や NSX という、新しいワクワクへの気概を感じさせてくれたホンダ。
また、海外向けですが、こんなワクワクするクルマとプロモーションを展開しています。
Honda UK の Type-R プロモーション、"the Other Side" こちらはトレイラーですが、本編は夜の顔と昼の顔、一人の男の "the Other Side" が、 YouTube の概念を変える驚きの仕掛けでもっておよそ3分にわたり展開されます。 超 Cool!! |
このところ気を吐き続けるマツダやスバルに負けず、「ワクワクする "Honda" 」が復権してくることを、願ってやみません。
それでは今夜はこの辺で。
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